日時:2025年9月6日(土)11:00~15:30
会場:平田観光農園
今回は、三次市にある平田観光農園に訪問しての授業です。
「ようこそ、平田観光農園に!今日1日、いっしょに頑張りましょう!」
社長の平田真一氏の元気な挨拶と笑顔に出迎えられました。午後からの授業では講師を務めていただきます。
農園のスタッフ、末國先生に連れられ、りんごの収穫体験のために畑に向かいました。今年70周年の歴史ある農園で、広大な敷地にはさまざまな果物畑のほか、多目的広場、BBQや食育関連の体験施設、動物とのふれあいエリア、レストラン・売店などが点在する、果物&自然を満喫できる一大テーマパークです。今の時期は、ぶどう、なし、プルーン、いちじく、ブルーベリーなどが採れるそうです。
さっそく、りんごの収穫体験のために畑へ移動。末國先生から美味しいりんごの見分け方のアドバイスを受け、真っ赤に熟したりんごを探し求め、足元に注意しながら奥へ入っていきました。
「めっちゃ、いいりんご見つけた!」
「とりたいけど、上の方にある…」
脚立を使い、高い場所に実っているりんごにチャレンジ。がんばれ!と声をかけて応援する塾生も。
「みて!見て!とれた!」
無事ゲットし、最高の笑顔を見せてくれました。
りんごの収穫を体験した塾生の声です。
「遠くから見ると赤いのがいっぱいあると思ったけど、近くで見るとそうでもなかったり。美味しそうなりんごを探すときや、もぎ取る感触が楽しかった」
「欲しいりんごは高いところになっていたので、はしごを使った。登ったときちょっと揺れて怖かったけど、JAバンクのお姉さんがおさえてくれたので大丈夫だった」
「みんなが、目当てのりんごを探したり、とっているのを観察するのも楽しかった」
りんご畑から教室に戻り、末國先生の“りんごクイズ大会”が始まりました。
「平田観光農園で作っているりんごは、1年間で何玉できるでしょうか?」
手をあげてそれぞれが思った数を答えましたが、正解は、塾生の予想をはるかに超える約30万玉でした。
続いて、りんごの品種の問題です。
「農園の中で最初にできるのは、“ちなつ”という品種で、最後に実るのが“ふじ”。みんながさっき採った“つがる”は何番目にできるでしょうか?」
正解は4番目。品種によって収穫時期が違うことを知りました。
最後の問題は三択クイズ。
「農園で一番収穫量の多いりんごは何でしょうか?」
塾生は、“世界一”、“陽光”、“ふじ”の3品種の中から選びました。
先生は、ひっかけ問題として“世界一”という選択肢を用意したのですが、大半の塾生が正解の“ふじ”を言い当てました。
お昼ごはんは“りんごカレー”です。園内のレストランで受け取り、教室に持ち帰って食べました。
「いただきます!」
りんごと玉ねぎをたくさん入れ、大きな鍋でじっくり煮こんだ平田観光農園特製のカレーです。添えられていたドライフルーツはりんごで、甘味のある濃厚な味でした。
みんなカレーが大好きで、あっという間に完食。さきほど収穫したりんごをデザートとして食べ始める塾生もいました。
食事のあとの自由時間で、園内を散策した塾生は『どうぶつひろば』で牛とヤギに餌やりを体験。間近でふれあい、穏やかなひとときを楽しんだようです。
午後からは、平田先生による農園ビジネスを学ぶ授業です。
「農園では、自然に感謝しながら、来園されるお客さまに果物の魅力をお伝えしています。果物が大好きという人を増やしたい。食べ物を通じて平和な社会を目指したい」
先生は、農園の使命をわかりやすく話しました。
次に、農園の事業についてのお話が続きました。
■栽培事業について
「私のおじいさんは思いました。西日本でりんごを作っていないのはなぜ?寒い地域でしかできないの?広島ではムリ?疑問をもったことが、この農園の原点になっています」
先生のお祖父様が、育てるのが難しいのならチャレンジする価値はあると考え、友人とともにりんご栽培をスタート。一般的にりんごが実るまでは5年かかるとされていますが、10年かけて初めて実ったそうです。競争相手が近くにいないので、大勢の人がりんご狩りに訪れたとのこと。昭和40年、観光農園のはじまりのお話でした。その後、ぶどう栽培を始め、台風被害で果物がダメになったことをきっかけに、台風が来る前に収穫できる、もも、さくらんぼの栽培にも取り組みました。結果、1年を通じて実りのある農園になり、1つの果物に特化した観光農園が多いなか、さまざまな果物を楽しめる平田観光農園の姿が徐々に整備されていきました。
ファン獲得のための画期的なアイデアのお話もありました。日本初のチケット交換制の果物狩り“ちょうど狩り”を導入、自分の好きな果物を組み合わせて、いろいろな味に出会えることで評判になりました。体験型のいちご狩り商品、“very berry ちょうど狩り”は、収穫だけでなく、お土産もスイーツも体験も楽しめるようにパッケージされています。
■加工事業について
「今から30年前、台風被害にあったぶどうの活用を考え、加工事業を始めました」
一般的だったジャムやジュースにするのではなく、当時、国内で誰もやっていなかった“干しぶどう”にチャレンジ。5年の開発期間を経て、日本で初めて干しぶどうを商品化し、全国発売に至ったお話を聞きました。
長野県内の温泉では、湯あたりを防ぐために食べる饅頭の代わりに、平田観光農園の干しぶどうを置いているところもあるそうです。
■飲食事業について
「果物好きな方が来園されていましたが、もっと多くの人に来てもらうために、フルーツパフェを始めてスイーツ好きな方に果物の魅力を届けました」
現在、園内にある古民家カフェでは、果物を使ったカレーやバーガー、スイーツ、ドリンクなどを提供しているとのことです。
■体験事業について
「農園のまわりは森です。アウトドア派の方に果物を好きになってもらおうと、薪割りをして火を焚き、焼きりんごや焼きマシュマロを楽しめる商品を提供しました」
火を囲むことで、非日常の世界観を味わえるプログラムです。ほかにも果物を使ったピザ作り、草木染め、果物を液体窒素でアイスクリームにする授業など、さまざまな体験メニューがありました。
『お客さまが求めているモノ・コトに対して、それに応えられるように果物をさまざまなカタチに変え、魅力を引き出しお届けする』。農園の事業のお話を通じて、塾生はビジネスに関するさまざまな工夫を知りましたが、すべてにおいて共通している考え方がありました。
農園では、情報発信にも力を入れていました。ホームページを見て興味をもったTV局が番組で取り上げ、大きな宣伝効果につながったとのこと。
「どんなに素晴らしい農園や果物を作っても、知ってもらわないと無いのといっしょです。これからみなさんが美味しいジャムを作るわけですが、それだけではお客さまは買いに来てくれません。どのような思いを込めて商品にしたのかを伝えることが大事です」
商品の宣伝、情報を発信する大切さを教わり、塾生へのアドバイスになりました。
塾生から先生への質問コーナーが始まりました。
質問:お客さんが一番多いのは、何月ですか?
「9月ですね。多いときで1日に約5,000人来園されます」
質問:ジャムに使う果物は、どういうものを選ぶのですか?
「果物が美味しくないとジャムも美味しくなりません。一番いいときに収穫した完熟のものを使います」
質問:売上げを増やすために、どんなことをやっていますか?
「お客さまの好みは変わるので、いろんな果物の栽培にチャレンジしています。今、アーモンドやカシューナッツ、クルミなどを植えています。実がなるまで10年かかります。将来は、お酒のおつまみとして商品になればと考えています」
このあと、食品ロス、食料自給率の問題、地球温暖化による農業への影響と食料危機について学びました。
「これからも世界中の人口が増え続けます。今まで日本が世界中から買っていた食料も、値段が上がり、手に入りにくくなります。食料が足りなくなるので、農業には確実にビジネスチャンスがあります」
食や農業についての課題を知った塾生から質問がありました。
質問:農家の人が減らないために、どんなことをやっていますか?
「今日の授業のように農業の魅力を伝えて、農業を志す方が増えるように頑張っています。農園では農業を目指す方向けに体験の受け入れもやっています。そのほかにも耕作放棄地の活用にも取り組んでいます」
質問:地産地消をすすめるために、消費者側が地元産を選ぶ以外にできることはありますか?
「広島で栽培される農産物を、誰がどのような方法で作っているのかを知ることです。まだ農業と消費者がつながっていない。それと、農家も消費者が何を求めているのかよく知ることだと思います」
授業後の塾生の感想です。
「ここに来る前までは、どこにでもある農園だと思っていたけど、社長さんの話を聞いて、いろんなことをやっている特別な農園だなと感じた。今まで誰もやったことのないことに、積極的にチャレンジしているのがすごかった。自分なら真似できない。今では広島で当たり前のようにりんごを育てているけど、昔は地元産のものは食べられなかったのだと…。挑戦したから今の生活があると思った」
「耕作放棄地が多くて、農家さんも減るということで、私たちが大人になったときにお米が食べられなくなるのかもと心配になった…。今日の授業で平田観光農園にとても興味をもったし、農業についてもっと勉強したいなと思った」
販売実習で扱うメインアイテム、“りんごジャム”の商品企画の授業です。末國先生が、塾生のアイデアをピックアップしながら話を進めました。
「ジャムを作る専門の私が、絶対思いつかないアイデアがたくさんありました」
その中のひとつ、ゼリーを使う発想について、加熱すれば本来の食感が失われる点。サイダーを入れるアイデアは、どんなモノになるのか想像がつかなかったこと。
塾生の奇想天外なアイデアに対して丁寧に解説していきました。
りんごジャムに、別の果物を組み合わせるアイデアを取り上げて話しました。
「りんごに、いちごを入れるとどんな味になると思いますか?」
1対1で混ぜ合わせると、香りや色が強いいちごの主張が強くなり、りんごの魅力が引き出せないので、混ぜるなら、りんご味を邪魔しないものを選んだり、分量を調整する必要があるそうです。
先生は、さらに大切なポイントを付け加えました。
「買う立場のお客さんが、どのような味なのか、想像するのが難しいジャムは避けた方がいいですね」
「香りだけをつける目的であれば、柑橘系の組み合わせはおすすめです。ドライフルーツを加えてもおもしろいかもしれません」
りんごの皮を混ぜるアイデアを提案した塾生へ、気づきを評価しつつ解説しました。
「皮のまわりが美味しいのです。栄養もたくさんある。りんごの皮を入れるとジャムが少し赤く色づきます」
アイデアを活かした商品化のヒントを教わり、そのほかにも、先生が興味をもった食材が次々と紹介され、塾生は褒められてとてもうれしそうでした。
先生の意見を聞いたあと、班ごとに話し合いアイデアをブラッシュアップし、発表しました。
◎子ども・大人・高齢者の3世代別にそれぞれが好む3種類の味わいを提供するアイデア
◎甘味のあるものと酸味を効かせたもの、2種類を作るアイデア
◎ラムネやマシュマロなどお菓子入れたアイデア
◎ライムの香りを添えるアイデア
次回、平田観光農園での授業で、ジャムづくりを体験し、販売実習で扱う商品が決定します。
本日の授業はすべて終了。お世話になった平田先生と末國先生に見送られ、塾生はバスに乗り農園を後にしました。