日時:2026年9月26日(土)10:00~15:30
会場:八天堂ビレッジ

本日は現場訪問授業のため、広島空港近くにある『八天堂ビレッジ(広島県三原市)』へ。八天堂ビレッジは、くりーむパンでおなじみの(株)八天堂が展開する体験型の食のテーマパークです。午前9時、塾生は先生とともに広島駅をバスで出発。1時間余りで到着すると、現地では(株)八天堂ファーム 代表取締役 林氏がにこやかに出迎えてくれました。
はじめに、大野先生からこの日の学習内容についての説明がありました。
「ここでは、施設の概要や商品の売り方、社長からはビジネスの貴重なお話を聞くことになっています」
10月下旬に予定されている販売実習で取り扱う商品は、八天堂ファームさんのサポートを受けます。ただ商品を仕入れて販売するのではなく、今回の訪問での学びは、販売実習で活かすための大切な時間になることが伝えられました。

小雨が降るなか、林社長がガイド役となって八天堂ビレッジ全体の開発経緯と施設について説明をしていただきました。広島空港近くにある八天堂ビレッジは、2013年に当時臨空産業団地だったこの地に工場が建てられたことからスタートしました。
「八天堂のくりーむパンは、当時ほとんど東京で販売していて約80%は空輸です。立地としてはとてもよく、商品の流通経路はよりスムーズになりました」
工場見学の人気をきっかけに、モノ消費よりも体験を価値とする“コト消費”へとシフトする社会の動きに合わせ、体験工房併設型のカフェ『カフェリエ』を建てたとのこと。
“たのしく、あたたかく、サプライズ”をコンセプトに掲げ、人とひと、自然、動物、それらが自由にふれあえる交流の場を創ろうと考え、フルーツをテーマにした商品や地元産品を販売する『空の駅 オーチャード』、スイーツを満喫できる『天空カフェ&ファクトリー』などの店舗も建てられたそうです。

「どうしてビレッジなの?」
塾生から質問があり、林社長が答えました。
「温もりのあるコミュニティが生まれる施設が点在する村のようになるようにとの願いを込めています。デジタル化が進む世の中、便利になる一方で日々の暮らしに疲れやストレスを感じやすくもなっています。そこで、人間味のあるふれあいを大切にした空間を提供することで設計されたのが八天堂ビレッジです」
カフェリエの近くには、社員が安心して働ける環境づくりのひとつとして保育園が整備されていることや、社名の由来につながるお堂のレプリカもあり、施設全体から、ここで働く人や地域との関わりを大切にする考えが伝わってきました。

施設見学のあとは、林社長によるビジネス講演が行われました。
「起農みらい塾という恵まれた学習環境に身を置くみなさんに敬意を込めて、あえて子ども向けの言葉ではなく、普段、経営者として大人同士で話している言葉でお伝えします。それはみなさんの理解する力を信じ、学ぶ意欲にも応えたいという思いがあるからです」
将来の目標はなく、学習意欲も特別高くなかった子ども時代からはじまり、他の人が経験できないことに多くチャレンジしていた大学時代。社会人1年目は、希望する部署に配属されず、モチベーションが上がらないまま業務に向き合っていたそうです。お客さまの期待に応えられず担当を外れ、仕事がなくなって時間を持て余す日々は大きな苦痛だったと語られました。
『働きたくても働けない。仕事がないのはどれほどつらいか…』
林社長は、若い頃にその苦しさを身をもって経験したそうです。そうした経験があったからこそ、障がいのある人や生活に困難を抱える人の働く場をつくる農福連携の事業につながっていったのかもしれません。

30歳で八天堂に転職、それまでの職場で培ったスキルが活かせない工場勤務に。その後、工場建設という未経験の大きな仕事を任され、それを貴重な機会として前向きに受け止めたそうです。社内外問わずさまざまな人の力を結集して完成したのが、八天堂ビレッジの工場ということでした。
「何でも1人で成し遂げる力だけを基準にするのではなく、みなさんも、自分にはない能力や経験を持つ友だちを頼りながら、一緒にさまざまな課題に取り組んでいく、そうした視点も持ってほしいです」

林社長の話を聞いた塾生から、次のような質問がありました。
「どうして工場づくりに挑戦しようと思ったのですか。不安はなかったのですか?」
これに対し、林社長は答えました。
「不安はとても大きかったです。当時は今ほど社員も多くなく、新しい組織をつくっていく段階でした。周囲には私より若い社員が多く、自分がやるしかないという思いもありました。また、純粋に面白そうだと感じ、新しい経験ができることはラッキーだと感じて、失敗を恐れず、前を向いて進みました」

次に、林社長は農福連携の事業に取り組むようになった背景について語りました。
八天堂の経営が苦しかった時期、広島県内にあった「たかちゃんのぱん屋」13店舗を閉店することになり、そこで働いていた人たちにも辞めてもらわなければなりませんでした。八天堂の3代目社長は、そのことを心苦しく思っていたそうです。
その一方で、当時行っていた福祉施設でのパンづくり教室では、入所している人たちが毎回とても楽しみにしていて、自分が必要とされていることに喜びを感じたといいます。そこで救われたような思いがあったからこそ、会社の経営が安定したら福祉に恩返しをしたいと考えるようになり、その思いが農福連携の事業へとつながったそうです。
それから、八天堂は社会福祉法人と連携し、オーナー不在となっていたぶどう園を引き継いで『八天堂ぶどう園』として運営を再開。ここは、塾生が明日収穫体験で訪れる農園です。
2022年には『八天堂ファーム』が設立され、ぶどうを育てる一次産業に、加工や販売を組み合わせた6次産業化、さらに農福連携を組み合わせた事業についての話がありました。それは、農業と福祉のそれぞれが抱える課題の解決を目指す取り組みでした。
さらに、生活に困難を抱える人たちに社会復帰に向けたトレーニングの場としてぶどう栽培に携わってもらうなど、就労支援にもつながる取り組みが紹介されました。
農業における鳥獣被害の話になると、衝撃的な映像が映し出され、塾生たちはみんな驚いた様子でした。
映像には、イノシシが後ろ足で立ち上がり、高い場所に実ったぶどうを取って食べる姿が映っていたのです。
ぶどう園の1年目には、9,000房に袋がけをしたものの、そのうち5,000房が食べられてしまったそうです。林社長は、イノシシが立ち上がるとは思っていなかったため、当初は食い荒らしているのはシカだと考えていたといいます。対策をしても毎晩被害が続いたことからカメラを設置し、そこでようやく原因が判明。初年度には、このような失敗もあったそうです。
「被害は残念な出来事でしたが、農園で働く生活困窮者の方々には、よい影響もありました。引きこもりがちで、働くことにつらさを感じていた方が、自分の関わったぶどうの成長に喜びや愛着を持つようになりました。さらに、イノシシに食べられたことへの悔しさが、ぶどう園に行きたいという気持ちや、働く意欲へとつながりました」
今では約1万6,000房を収穫し、そのうち約3分の2を地域のスーパーで販売しています。残りの約3分の1は、形や大きさなどの理由で店頭販売には向かない規格外品です。これらのぶどうは廃棄せず、ほかの生産者から集めた規格外品とともに加工品の原料として活用しているそうです。
さらに、農福連携の事業を盛り上げていくため、さまざまな立場の人たちがつながる仕組みをもつ『農福コンソーシアムひろしま』がつくられ、農業や福祉、民間企業、教育機関などが連携しながら協力関係を広げているとのこと。八天堂ファームはそのなかで、農業を持続可能で収益性のある事業にしていくため、人と人とをつなぐハブの役割を担っているそうです。

林社長によるビジネス講演の最後には、塾生から感想とお礼の言葉が述べられ、締めくくられました。
「お忙しいなか、貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。農福連携のビジネスについて詳しく知ることができました。これからの販売実習にも活かしていきたいです」



ランチは、スペシャルメニューのドリアセット。デザートは八天堂ファームの『果実なくりーむパン〈シャインマスカット〉』。とても美味しくいただきました。

最初に八天堂ビレッジにある施設の紹介や八天堂の歴史についての動画を見ました。和菓子事業で創業し、和洋菓子への転換からパンへの路線変更と時代に合わせて進む八天堂の歩みを知りました。


続いて仮想空間で工場見学の擬似体験を行う、VR工場体験です。八天堂ビレッジのスタッフ 秀衡さんから説明を受け、準備。目元にマスクをつけて、その上からVRゴーグルを装着してVR映像がスタート。実際に工場の中に入ったような感覚で、くりーむパンの製造工程を360度ぐるりと見渡しながら理解を深める内容です。製造だけでなく、商品が店頭に並び、お客さまが手に取ってもらうまでを一連の流れとして理解できたようです。

「VRは迫力があって、おもしろく、内容もわかりやすかった。もう少し見たかったな」
塾生は名残惜しそうにしながら、もっとVRを体験したい様子でした。

林社長のガイドで八天堂ビレッジにある店舗の見学に行きました。販売実習の授業に活かすため、商品やPOP、陳列方法、値段、接客などをチェック。気づきをメモしながら店内を隅々まで観察しました。
最初はカフェリエ内にある、くりーむパンの聖地『八天堂本店』。冷蔵ショーケースにはくりーむパン、本店限定商品も陳列されていました。




林社長からは、POPについて商品を魅力的に見せる写真の説明がありました。
続いて、地元の特産品が並ぶ『空の駅 オーチャード』やイートインメニューが充実した『天空カフェ』も視察。店舗によって扱う商品や販売スタイルが異なり、販売実習につながる有意義な時間になりました。塾生全員から林社長へ、1日を通して丁寧にサポートしていただいたことへの感謝を伝え、現場訪問授業を終えました。

帰り道の途中、山陽自動車道 小谷サービスエリアに立ち寄り、農福連携商品を取り扱うコーナーを見学。八天堂ファームのふどうや加工品が並び、実際の売り場で学習のふりかえりができました。